多忙の人

誰彼を問わず、およそ多忙の人の状態は惨めであるが、なかんずく最も惨めな者といえば、自分自身の用事でもないことに苦労したり、他人の眠りに合わせて眠ったり、他人の歩調に合わせて歩き回ったり、何よりもいちばん自由であるべき愛と憎とを命令されて行う者たちである。彼らが自分自身の人生のいかに短いかを知ろうと思うならば、自分だけの生活がいかに小さな部分でしかないかを考えさせるがよい。

人生の短さについて (1980年) (岩波文庫)

人生の短さについて (1980年) (岩波文庫)

 

座右の書に追加。まるで、生産のための単なる機能と化し忙殺されていく現代人を予言しているかのようだ。それとも、悲しいかな人は古代ローマの時代からまったく変わっていないということか。いずれにせよ、凄まじいほどの抽象度の高さは時空をも超えるという事なのだろう。

セネカのような人物はおそらく、マズローの欲求段階説で言うところの自己超越をなしたものなのだろう。