リスクを制するものは投資を制す その①

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皆様は投資で長期間に渡って成功するために重要なことは何だと考えるだろうか。先見性、洞察力、分析力、メンタル力、いろいろ考えられると思う。事実、それらすべてが重要だと思う。しかし、私は投資において一番重要なことはリスク管理能力だと考えている。トレードでいうところのマネーマネジメントもその一つだ。リスク管理というと、どちらかと言う守備的で地味な能力と思われるかもしれないが、少しでも本気で投資に取り組んでいる方には賛同いただけるのではないかと思う。

なぜ超優秀な人材ばかりを集めたリーマン・ブラザーズが破綻したのか。リーマンだけではない、ノーベル経済学賞受賞者を役員に迎えていたLTCMの破綻などもそうだ。世界でもっとも優秀な人や組織があっさりと破産の憂き目に会う、これが投資の世界の現実である。

じゃ我々凡人が投資なんかしても勝てるわけないじゃないか、と思われるかもしれないが、決してそんなことはないのでご安心いただきたい。上記のような人や組織が破綻する時には決まって共通の理由がある。それは簡単に言えば”リスクの取り過ぎ”である。つまり、リスク管理の崩壊である。リーマン破綻時に問題になったサブプライムローンを最新の金融工学を駆使してて作り上げたMBS(Morgage Backed Security)は、当時低リスク高リターンの最強金融商品としてもてはやされ、誰も疑いもなく大量に世界にばら撒かれていた。その商品のリスクとリターンの関係式はあまりにも難解で金融機関のトップたちすらも理解していなかったそうだ。当然そんな有様では正確なリスク把握などできるわけがない。で、住宅価格が少し下がりだしたとたん、あの騒ぎである。

ともあれ、皆様はどのようなリスク管理をしているだろうか。所謂、損切りだけがリスク管理ではない。投資家がリスクを把握する上で、大よそ次の4つのを大きなカテゴリーとして考えることができる。

 

①Market Risk (市場リスク)

これはいわゆる市場のボラティリティによってもたらされるもので、我々が普段価格の変動によって被る損失(または利益)のことである。通常トレーダーが損切りを設定するのはこの市場リスクに対応するためだ。

②Liquidity Risk (流動性リスク)

流動性、簡単に言うと現金不足、あるいは資産の現金化が困難な場合に起こるリスクだ。分かりやすい例でいうと、追証(Margin Call)などがこれである。マーケットの一時的な急変動で、価格が下落したとき、証拠金比率を下回った場合、現金があれば元本を補充することで、追証を避けることができるが、十分な現金つまり流動性ポートフォリオに存在しなければ、強制的に不利な値段で決済されてしまう。これが流動性リスクである。よって証拠金は余裕のある範囲で預けるのが基本である。

③Credit Risk (信用リスク)

これは例えば、お金を貸している相手が債務不履行になる場合のリスクである。株などをやっている場合は当然、投資先が倒産して株券が紙切れになると言うリスクを背負っているし、例えばFXだとブローカーが倒産して証拠金が引き出せない(この場合は保証されているのが普通だが)などがこれにあたる。よってブローカーを1社ではなく、複数社に分散して取引する等の対策が必要となる。

④Operational Risk (運用リスク)

この運用リスクの概念は広く、要は人とシステムが起こしうるあらゆるリスクである。身近な例だと、PCが急にフリーズした、ロット数を一桁間違えて注文を出してしまった、売るつもりが間違って買ってしまった(こういう時に限って、その注文で大勝してしまったりすることが多いのだが・・)、システムトレードなら、コーディングミスでとんでもない大損をしたなどである。で、有名な投資銀行やファンドが潰れる時はだいたい、この運用リスクが主因であることが多いのが実情だ(スタートレーダーの大損失隠し発覚など)。運用するのは人間なのだから、当然といえば当然である。

ともかく、リスク管理と一言で言っても、個々人あるいは組織ごとの置かれた環境によって様々なリスクが考えられるので、よくよく考えてリスクヘッジを行われることを推奨する。そして、自分自身にも常日ごろ言い聞かせて行きたい。

ちなみ、市場リスクを把握するために、機関投資家などがよく使っている概念にVAR(Value at Risk)というものがあるが、これについてはまた別の機会に簡単に説明しておきたい。