不確実性が支配する世界における最良の戦略とは -小さく賭ける

 事前の計画の有無や投資金額の多寡は成功のチャンスに大きく影響しないという考え方は、直感に反している。しかし、賭け金の大きさと成功の規模に相関関係がないことを理解するためには、この考え方を用いるのが一番だ。例はいくらでもある。

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小規模の賭けをすると、幸運を得る機会が増えるだけでなく、アイデアを繰り返し試すことができる。アイデアを成功させるためには、何度も試すことが大切だ。

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私は、できるだけ小さく賭けるという考え方をさらに発展させた。それは、実行可能な小さな一歩を踏み出すことだ。

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目的ある賭けをする場合、はるかに有益な計算がある。しかも、これはすぐに答えが出る。ROIではなく、許容損失額に注目するのだ。

成功は“ランダム

成功は“ランダム"にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

  • 作者: フランス・ヨハンソン,池田紘子
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 ここからは投資の指南書かと思うような点がいくつか挙げられている。

それもそのはず、新規に事業を起こすのと何かに投資をするということは、将来の不確実性という点において本質的に違いはないのだから。

一般的に、投資額や組織の大小が成功を決定付けると思われがちかもしれないが、本書では成功の確率はそれらに依存しないとする。事例は本書を参照されたいが、過去の大企業の失敗や名もない弱小企業の隆盛を見れば当然と言える。

上記の点は投資に置いてもまったく同じだ。初心者はどうしても最初から大きく賭けて、資金量の大半あるいは全てを失い、再起できなくなる傾向がある(私もその一人だった。幸運にもその後すべてを取り返すことができたが。)。投資の世界をなめているのと、早く稼ぎたいという焦りのためだろう。だが、新規ビジネスにおいてそれは一か八かの博打であり、高確率での倒産が待っているだけだろう。

よってビジネスを始めるにしても投資を始めるにしても、不確実性が支配する世界では、本書のとおり最初は小さく賭けることが非常に重要だ。我々は天才でもなければ神でもない。先のことはわからない。この絶対的事実をまずは受け入れなければならない。それがすべてのスタート地点である。

投資においては、最初のポジションで取る許容リスクを総資金量の1%から2%に押さえるというのが通説となっている。100万の資金があるとすれば、1-2万円の損切りをするということだ。

そんなちょこまかと賭けて、いつになったら成功と呼べるほど儲けられるのかと思うかもしれない。そこで思い出してほしいのが、努力と成果の乗数曲線だ。資金量の数パーセントなら、どんなに負け続けても資金量の半分を減らすのには、相当の回数と時間が掛かるだろう。その間に得る知識と経験の蓄積は決して無駄ではないことが後になってわかるはずだ。

不確実性とは言っても、投資もビジネスも不完全な人間の集団が関わる物理現象である。そこには何かしらのパターンやフラクタル(相似)が存在するのも確か。それらが頭ではなく、体に染み付くまでは、生き延びることを最優先とし、チャンスを虎視眈々と狙うのが大切だ。