ポジショントーキングと因果関係とステマと

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投資と人生において、時にあらゆるバイアスを排して、あるがままの現実を認識することが非常に重要な場合がある。しかし、世の中には、人の認知の歪みやバイアスを利用しようとする罠がいたるところに仕掛けられているので、それらを見破るにはある程度の訓練が必要だ。

投資の世界では、それらの罠の一つとして、ポジショントークというものがある。これは、著名な市場関係者が、マスメディアを使って、自身がもつ株・為替・債券などのポジションに有利なように発言することを言う。例えば、日本株のロングポジションを持っているとすると、ワイドショーなどで、アベノミクスサイコー!年末には2万円もありえます!(実際はもっと遠まわしで知的な言い方をするだろうが。。)などといって、個人投資家を煽り、実際に株価が上がったところで手仕舞うおうとするたくらみである。こういう発言を真に受けて買ってしまうと、まんまと梯子を外されて大損する可能性もあるので、要注意だ。あくまでも投資は自己責任でやりましょう。

ポジショントークは何も投資の世界に限ったことではない。たとえば、友人なり知人の話によく耳を傾けてみてほしい。おそらく、自分が買った家が、車が、バッグが、犬が、はたまた付き合い始めた彼氏や彼女がいかに素晴らしいかをあらゆる面から語っていることだろう。営業畑上がりの社長は、顧客が一番だといい、システム部上がりの社長はデータが一番だといい、財務部上がりの社長はリスク管理が一番会社にとって重要だというだろう(社内ローテーションの重要性はここにある。)。サラリーマンはサラリーマン生活が、起業家は起業することが人生でベストの選択だと言うかもしれない。皆、それぞれの立場(ポジション)に立った発言をしてしまう傾向があるのはしかたのないことなのだ。

次にわかりやすい罠は、因果関係をたくみに操作した罠だ。例えば、A→Bという因果関係があるとしよう。論理学の世界ではA→Bのとき、B→Aとはならない。これは基礎中の基礎だ。しかし、世の中ではこんな手法がまかり通っている。

簡単な例を挙げよう。最近書店で、長財布を持てば成功者になれるといった類の本をよく見るだろう。上の例だと、長財布を持つ(B)→成功者になる(A)という主張だが、これは完全に誤りだ。本当は、成功者(A)→長財布を持つ(B)を逆にしたものに過ぎない。そもそも、これ自体もただ成功者は長財布を持つ傾向にあるというだけの話(さらに言えば統計データも必要)でA→Bが常に成り立つとすらいえない。現に私は、折りたたみ財布を持つ成功者を知っているし、その逆も知っている。そもそも成功者の定義すらあいまいだ。

釈迦のような生活をして修行すれば悟りを開ける。これも同じ理屈。釈迦は悟りを開いた結果、長時間の瞑想など一般人には修行に見えるような生活をしていたのであって、他人がその生活を真似しても悟りを開くことはできない。

他にも因果関係と相関関係を使った罠や統計データを使った罠などなど様々だが長くなりそうなのでこのくらいにしておこう。

こういう罠を見破るには、その主張で誰が得をするのかを考えればよい。得をするのはそのような罠を信じ、実行する読者や消費者ではない(実際はプラシーボ効果というものを無視できないが。)。得をするのは、そのような主張を売っているほうである。そして長財布メーカーもそうかもしれない。もしかしたらその主張者に長財布メーカーからキックバックがあるのかもしれない。これが世に言うステマというやつだ。芸能人のブログ詐欺が最近話題になったが、多かれ少なかれ企業はこういう罠を使っている。それを詐欺と呼ぶのか、マーケティング戦略と呼ぶのかの違いだけだ。

皆様も世の中にどんな罠が仕掛けられているか、いろいろ観察してみると面白いと思う。それを罠だと分かった上ではまってみるのもまた一興のはずだし、経済を潤滑に回す一助となれるはずだ。

 

 統計データは出していないが、この本はちゃんとA→Bと言っているので、興味がある方はご自身の目でロジックを追ってみてもいいかもしれない。

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