運用成果の評価

運用成果の評価に関して、プロのファンド・マネジャーが感じる大きな不満の一つは、誤った意思決定でもたまたま好結果を生んだ時には歓迎され、たとえ適切な意思決定でも一時的に好ましくない結果をもたらすと、口座の解約につながりかねないということである。意図された目標から外れることは、実際の成果が期待以上であった場合にも、期待以下であった場合と同様に「間違って」いるのである(たとえば、航行中の船が目的地から10マイル西にずれてしまった場合も、10マイル東にずれてしまった場合と同様、間違っているのは同じである)。確かに低い収益よりも高い収益を得る方が良いに決まっているが、どちらも目的地からずれていることは同じであり、投資家はファンド・マネジャーの「運」「不運」と「実力」を混同してはならないのだ。

 

敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか

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これは、個人投資家・トレーダーにも当てはまることだ。たまたま勝ったことを”実力”だと認識し、正しく負けたことを”失敗”と決め付けていないだろうか。投資においては何を失敗とするか、何を成功とするかで中・長期的成果が変わってくる。運用方針、戦略、資金管理やトレードルールのない投機や投資はたとえ、利益が出たとしてもそれは失敗である。そのような利益は長期的には必ず消失する。おそらく投資家本人も勝ったものの、なんとも言えない不安に苛まれるはずである。なぜなら、その勝ちを再現することができないことを無意識的に理解しているからである。逆に、しっかりとしたプランやルールのもとで負けても、それは決して失敗ではく、成功なのでなんら悲観することはなく、ただその敗因を分析し、必要とあれば当初のプランやルールを修正すれば良いのである。

世に出回ってる商材のほとんどは、幸運でたまたま時流に乗って大金を手にした者が、それをまるで自分の実力であったかのように錯覚し、再現性のない手法などを無知な初心者に売りつけているというのが現状だろう。できれば、自分が教えを乞うている人が本物かどうかをチェックするためには、その人の過去の投資トレード履歴をすべてチェックし、それを其の時の相場環境と比較することをお勧めする。