日本の貿易収支とJ-Curb Effect

さて、次の記事をみていただきたい。

9月上中旬の貿易収支、9940億円の赤字 24カ月連続 :日本経済新聞

かつて輸出大国と呼ばれた日本が今や24ヶ月連続の貿易収支赤字である。これは楽天のマー君開幕24連勝と同じくらい驚くべきことだ。

推移はこちらを参照。[世] 日本の貿易収支の推移

これだけ円高が是正されたのになぜ?と思う方もいられるかもしれない。円安が続けば当然日本の輸出企業の国際的競争力は増加し、輸出額の増加が貿易収支の改善を促すというのは自明の理だ。しかし2011年2月から既に始まったドル円の歴史的トレンド転換からほぼ三年を経た今のこの有様である。疑問に思う人がいるのも当然である。実はこの現象は一般的にJ-Curb Effect(Jカーブ効果)と呼ばれるものであり、なんら驚くようなことではない。つまり、円安の効果が輸出額に効果を及ぼし、貿易収支が改善に至るまでタイムラグがあり、その間に輸入価格の相対的上昇により輸入額が増加することで、むしろ短期的に貿易収支が悪化するという現象だ。その現象を長期的グラフにすると丁度アルファベットのJにそっくりなのでその名が付いたようである。(要は、お酒をたしなむ程度だと健康に良いが、それ以上飲めば飲むほど健康が蝕まれていくよってこと。)

実際、日本の輸出額は円安効果で増加傾向にある。ただ、それ以上に輸入額が増えているというだけの話だ。おそらく今はこのJの底に位置しているといえる。

しかし、私自身は今回の日本の貿易収支についてJカーブ効果が成り立たないのではないかと思っている。理由か下記のとおり。

①日本はもはや貿易(輸出)立国ではない。

②日本の輸出企業が、慢性的な円高に対応済み。

(海外への生産拠点移転と資本の現地還元)

原発問題に端を発する、エネルギー輸入の増加。(アメリカのシェールガス含む)

⑤TPPにより、今後、輸出より輸入が増加する。

他にも理由はあるが、要は日本経済の根本的構造がもはやこれまでの高度経済成長期とは別物ですよということだ。これはあくまで私のもつ断片的情報による仮説であり、詳しいデータの裏付けを今後していく必要がある。ただ、ひとつ言えるのはもしJカーブ効果が今後実現されるなら、実需だけを考慮すれば、ドル円は長期的に円高にならざるを得ない。当然輸出が増えると売り上げの外貨を円転しなければならないからだ。しかし、もし私の仮説が正しく、日本が米国のように慢性的貿易赤字国となるなら、まだまだ長期的な円安の上値余地はあると考える。今や為替相場は実需よりも投機マネーの取引量のほうが圧倒的に多く、実需の影響は少ないという人もいるかもしれないが、私はあまり実需をそのように過小評価していけないと思う。なぜなら投機マネーは必ず反対売買(買ったらいつか売る、売ったらいつか買う)が行われるが、実需にはそれがなく買いきり、売り切りが常なのだ。これは言わば、取ったポジションを永遠に保持しているということと同じだ。故に長期的には投機マネーは実需の方向に動かざるを得ないのである。これが所謂ランダムでないトレンドの正体である。少し話しがそれて長くなったのでここまでとする。実需と仮儒については下記の書籍にわかりやすく書いているので、興味があれば一読をお勧めする。

 

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