バフェット&ソロス

投資道を極めようとする者であれば誰でも知っているであろう米国の最強投資家がウォーレン・バフェットジョージ・ソロスだ。

私も、この”投資の神”と”イングランド銀行を破綻させた男”がいかなる人物か下記の2つの本を開いてすこし触れてみた。

さて、ジョージ・ソロスのほうだが、私の彼に対するイメージはやはりすさまじいIQと洞察力および知識と信念を兼ね備えた冷酷非情な秀才というものだった。おまけに豊富なインサイダー情報とネットワーク、なによりも莫大な資金力で市場を操る錬金術師といった感じだ。

本書籍の前半では、彼の独自の理論である、市場における再帰性について、マクロ的観点で理路整然と論じており、まぁイメージどおりといったところだった。

だが、面白いのは後半のソロス自身のQファンドの運用状況をリアルタイム実況をしているところだ。確かにファンドの運用実績は年利130%を超える驚くべき数字をたたき出してはいるが、その過程でああでもないこうでもないと右往左往して気をもんだり、日本株で失敗しては落胆し、失敗が失敗を呼んで悪循環に陥らないよう神経質になり、自分を戒めたりと、そこには人間ソロスが生々しく描かれており、非常に興味深い。

理論をこねくり回すのと、実際リスクを取って市場で勝負するのとではまったく次元が違うということは、このソロスにとっても同じなのだ。

なぜなら、リスクを取った時点で人は自身の失敗と喪失に対する恐怖と成功への欲望に否が応でも向き合わなければならないからだ。それらに打ち勝つにはよほどの知性と忍耐が必要なる。相場という不確実性に直面した時にどう行動をするかで決まるのだ。

投資というのは、未来をいかに正確に予測できるかを競うゲームではない。むしろ未来は誰に対しても平等に不確実であり予想不可能であるという事実を前提としなければならない。これは投資で成功するために非常に重要な意識の転換だ。

人間が将来を正確に予知できない以上、できること・やるべきことは1つしかない。それは限られた情報の中から自分なりの仮説とシナリオを立て、現実の市場で検証する。

そして、その結果をもとに仮説の修正・変更を繰り返し、精度を徐々に高めていくということである。作業自体は実に地味である。しかし、これができるかどうかで長期的な結果は天と地ほど違ってくる。

これは何も投資の世界に限ったことでない。ビジネスやスポーツその他の分野でも同じことがいえる。その点においてソロスは並の投資家よりはるかに優れているのだろう。よって始めから答えありきの世界に安住したい人にとって投資の世界はお勧めできない。

日本の教育はこの最初に答えありきを前提としているため、おそらく日本からはソロスのようなスーパー投資家がでて来づらいのかもしれない。この問題はまた別の機会に詳しく触れたい。

さて一方、ウォーレン・バフェットのほうはどうか。今回紹介する書籍では第三者によるバフェット像なので、いまいちはっきりと人物像が浮かび上がってこないが、どちらかと言うとバフェットのほうが天才投資家という感じを受けた。

ただ、世界一の富豪である今でもチェリーコークマクドナルドを食べ、昔買った普通の家に住む彼の人間性には興味を魅かれる。メディアによって作り上げられた聖人君子に対する畏敬などではなく、お金を増やすゲームにとりつかれた(本書ではライノフォビアという病気だとしている)年をとった少年のある意味偏った生き様への興味である。

少し長くなったのでバフェットについては別の機会にまた触れたい。

 

ビジネスは人なり 投資は価値なり―ウォーレン・バフェット

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新版 ソロスの錬金術

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