物理と投資
市場が物理現象に支配された個々の人間の行動による集合体である以上、物理学と市場原理の理解は切っても切り離せないだろう。物理学出身の優秀な学生がヘッジファンドなどに流れるのは偶然ではないだろう。
で、最近読んだ『エレガントな宇宙』はおすすめだ。超ひも理論研究者の著者が、現在物理学が抱える問題と課題を超ひも理論の観点から非常にわかりやすい例を使って説明している。
簡単に要約すると、アインシュタインの一般相対性理論における凸凹のない幾何学的空間(および時空)モデルと超ミクロのスケールでの量子力学的特徴(不確定性原理)は真っ向から衝突、矛盾するということだ。
その矛盾を説明する有力な統一理論として、超ひも理論が注目されているそうだ。市場に無理やりたとえるならば、例えば、短い時間足(1分やティック)を眺めていると、その値動きはまるで法則性やパターンなど一切なく自由に動いているように見える。
これをミクロ世界での空間の量子的ゆらぎとし、長期足での”美しい”動きをアインシュタインの一般相対性理論が支配する我々になじみある世界とみるとなかなか面白い。
もしそのような超短期足と長期足の値動きを説明する統一理論や手法が開発されれば、一瞬で世界一の富豪となるのは間違いない。
しかし、それは現実的にはありえないだろう。時間足に関わらず、市場の値動き事態がランダムであるという説(ランダムウォーク理論)がいまだに有力なのが現実だ。
実際、完全な乱数をチャート形式で表示すると、現実の相場のように、きれいなトレンドやトレンド変換、ダブルトップ、ダブルボトム、ヘッドアンドショルダーなどが形成されることが証明されている。
私はランダムウォーク理論を肯定しないが、人の認知のいい加減さや偏りはランダムなものにありもしないトレンドを読み取らさせるのに十分だということは理解している。だからこそ、一人一人に各々の相場感や認識があり、市場で破産するものもいれば大富豪になるものも出てくるのである。
そういう意味で、人は法則性を認識することや意味づけをせずにはいられない生き物であり、その格好のツールとして、言葉やシンボルが生まれたのだろう。
物理学の量子的ゆらぎや不確定性原理はそんな人の歪んだ認識を真っ向から否定してくれるほずだ。
だからといって私は市場にランダムでないトレンドやパターンが存在しないとは信じないし、もしそう信じるのであれば投資に多くの時間と労力を裂くようなことはしないだろう。
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