Time Value of Money

投資の世界に足を突っ込むと、おそらく最初に学ぶであろう概念がTime Value of Money (お金の時間的価値)だ。簡単にこの概念を説明すると現在のお金と将来のお金の価値はたとえ同額でも異なるということだ。

例えば、1ヶ月後に受け取る100円と今受け取る100円では、後者のほうが価値が高い。100円は100円じゃないかなどと考える人は投資家には向かない。なぜなら1ヵ月後に受け取る100円を現在価値に割引くと、確実に100円以下になるからだ。

逆に言えば現在の100円をたとえば、月利1%の無リスク資産(国債等)で運用すれば1ヶ月後101円となる。(無リスク資産というのがポイント、下手にリスク資産で運用すると、まぁ大抵の場合この概念は崩壊でしょう。)ちなみに、国債などの無リスク資産での運用レートをrisk fee rateという。

通常risk free rateと株などのリスク資産の運用利回りとのギャップをリスクプレミアムと呼び、当然債権よりそれらリスク資産の期待利回りのほうが大きくなければ、投資対象としての価値はなくなる。

この概念は、日常生活においても非常に身近なものだ。

例えば、3ヶ月前、私は車を売るために中古車ディーラーと委託販売を契約した。当初の買取査定価格は100万だった。他のディーラーでもほぼ同じだったので適正な市場価格といえる。

ところが私の契約したディーラーは一通りの説明のあと、委託契約販売の提案をしてきたのだ。内容は、買取保証100万円付きで、3ヶ月以内に設定価格で売れた場合は110万円を支払うというもの。

つまり、今100万を受け取るか、車が実際に売れるのを待って、もし売れた場合に110万円を受け取るかの選択が可能であるということだ。当然、3ヶ月以内に売れなければ保証金額100万円はいつでも受け取れる。

これは立派な金融商品である。私は非常に迷った。通常なら最低保証金額100万円あるなら委託販売でいいじゃないか、と思うかもしれない。しかし、もし車が3ヶ月以内に売れなければそれは”損”をするということだ。理由は冒頭に述べたTime Velue of Moneyの概念によるものだ。

3ヶ月で確実に10%の運用利回りを誇る無リスク資産など当然ない。だが、自分で運用すれば3ヶ月で10%以上は、無理なく達成可能な範囲だ。当時なにかとゴタゴタして忙しく、私は結局委託販売契約を選んだ。

結果は・・・・3ヶ月での販売ならず、100万円をしぶしぶ受け取った。結果論だが私のファンドの運用成績に照らし合わせると、おそらく15万から20万くらいの損をしたことになる。

普通はディーラーに文句のひとつもいいたくなるのだろうが、私としては、投資家としてリスクを把握した上で、当時のベストな選択をしたまでなので、まぁしかたがない。日本の国債3ヶ月ものの利回りが0.1%とすると、1000円損ぎりの10万円の利食い目標のトレードと同じで、リスクリワード比は100。十分正しい選択をしたということで、無理やり納得しておこう。

ちなみに、今米国でのデフォルトが騒がれているが、それもそのはず、デフォルトすることが絶対ないといわれた無リスク資産である米国債がデフォルトするという矛盾と皮肉に満ちた事態が目前に迫っているからだ。

そしてあらゆる金融商品の根底にはこのrisk free rateをもとに計算されたものが多く(割引率など)、そのrisk free rateが成り立たないということは、金融業界を根本から破壊する威力をもつのは容易に想像できる。

そのことが逆に、今回もあっさり債務上限が引き上げとなることの証拠でもあるのだが。上限引き上げ→政府閉鎖解除→QE縮小でドル円は100円復帰が規定路線だろう。